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作文「(霊性を伴う)私的な小規模盆踊り開催のススメ」

7月も下旬と相成りました。本来なら盆踊りシーズンに本格突入している頃中ですが、悲しいかな続々と中止が発表されている状況です。 残念なことですが、お祭りが地域自治体により公共の空間で開催される以上、止むを得ないことでしょう。

一方、これまでの感染傾向から、対策をすればリスクを軽減できることもわかってきました。クラスターの発生には、相応の要因が明らかになっています。しかも盆踊りは屋外で開催するのが基本、黙々としてお互い向かい合うことも少なく、常時ぶつからない程度には間もとります。無論、マスク等の対策は必要ですが、人類の各種営為の中で「盆踊り」それ自体は、比較的安全な部類といえるでしょう。

勿論、それでも感染リスクはゼロではありません。ただ大切なのは、そうしたバランスの中で、一人一人が考えて選択できる自由や余地があることだと思います。

ということで、どんどん「私的な小規模盆踊り(何か名称が欲しいですが)」があちこちでたくさん開催されることを願ってやみません。何らかの偶然でこの文章を目撃された方は、是非開催してくださいませ(町無会はこれからも開催するけれど、そればかりだと余所の櫓へ遊びに行けないし)。

しかし、ここで痛感するのはその(意外な)難しさ。盆踊りほど「参加」が容易な芸事はないかと思いますが、「開催」するとなれば話は別です。

いえ、ただ踊るだけなら簡単です。それこそ手持ちのスマートフォン一台さえあれば、ネットの音源を再生するだけで踊ることはできます。まあ、それでは音量が小さいので次はスピーカーが、という話になりますが、そんな感じで身近な需品を揃えていけば、開催することはそれほど難しくはありません。

でもそれだけでは、何と言うかべきか、本来の盆踊りが持つ、単なる踊りだけではない場に満ちる「雰囲気」みたいなもの……は再現できません。

個人的な話ですが、盆踊りを好きになった当初、それは「踊り」自体が気軽で楽しいからだと思っていました。根暗な性格のため、元々騒がしい「お祭り」はむしろ大嫌い。しかし続けるうちに、盆踊りはどうやら踊りだけではないことが薄々わかってきました。年中自由に好きな曲を数多踊っている方でさえ、シーズン中は盆踊りの現場へと出かけて行きます。自室で一人自由に百曲踊ることは、盆踊り会場の炭坑節一掘りに如かず(?)。

本来の盆踊り会場に宿る特有の霊性とでもいうべきもの。それはやはり単なる賑やかさでもないように思います。

それを私的な小規模盆踊りに(少しでも)導入するにはどうすればよいのか。その不可能は前提としつつも、当町無会盆踊りでは開催にあたり次のことを基本指針としています。

  • 屋外で開催する
  • 夜に開催する
  • 会場を都度変える
  • 櫓や提灯や紅白幕を(模型だが)飾る
  • 参加自由(特定の人に限らない)

既に同好の士による(オンラインでない)盆踊りは各所で開催されつつあるようです。なので町無会盆踊り大会もそろそろお役御免かと思いましたが、多くは人数を制限した公民館等屋内での開催のようです。屋外は、正式に許可をとるのが難しい(又はそもそもできない)。ということで、町無会盆踊りは(下見で様子見の上)いつ善良な市民に通報されるともしれぬ無許可での開催となります。

これについては、まあ「人は原則として、自由である」という考え方を頼りにしています。そもそも私たちは誰かの許可を得て生きているわけではありません。基本的には自由で、枝が触れ合った時、穏和に話し合えばよいかと思います。まずは踊ってみる。それ自体は悪いことではないはず。

場所探しには多少苦労しますが、新しく発見するわけではなく、ひたすら思い出します。この地域に住み続けて、どこかに広い空間もあったはず、と。この記憶を探る作業はなかなか楽しい。生活圏の地図は既に頭の中で或る程度できあがっているわけですが、それを別の基準で見直す作業。

夜に開催するのは、雰囲気もありますが、そもそもこの季節だと日中の外では暑くて踊っていられません。もともと盆踊りには納涼の目的もあります。屋内になるとこの必然性が薄れ、日中の開催も多いようです(又は夜に開催しても室内の雰囲気はあまり変わらない)。

夜となれば灯りが必要です(まあ逆に、灯りを点すために夜やるのかもしれません)。提灯も色々あり。下記が安かったのでシモジマの実店舗にて購入しました。

尚、赤提灯は飲み屋の看板用ですのでご注意ください。……こんなことも、いざ自分で買おうとするとわからず、検索で最初に出てきた赤提灯を見て「なーんか違うような……」と首を捻りつつ、うっかり買ってしまうところでした。

提灯の中に、下記のようなモバイルバッテリー用のLED電球を放り込んでいます。当然ですが屋外にコンセントはそうそうないので、電源供給は電池かバッテリーが頼りです。

ところで、当然ながら提灯いっこやにこ程度では光量が足りません。とはいえ沢山用意するのも大変。なので、今後こうした小規模盆踊りが普及した折は「参加者が提灯を持ち寄る」のが一つのスタイルになるかもしれませんね。新しい独特の霊性っぽくて、良いではないでしょうか。

肝心の模造櫓についてはまた後日別項にて。取り急ぎ櫓はなくとも、輪の中心を示す何らかの表示はあった方が良いかと思います。それがスピーカーなどを載せる台を兼用できれば尚便利。

これで私的な小規模盆踊りの準備が整いました。今晩にでも開催しましょう、そうしましょう。他にも霊性を高める道具や手段などありましたら教えてくださいませ。


突然話が飛びますが、おとなり中国の都市部では、夕方になると街のあちこちで「広場舞」が開催されます。公園だけでなく、オフィスビル前の広場や道路脇などにも、スピーカーをキャリーに載せて、おばさんたちがやってきます。多種あるため一概には言えませんが、曲に合わせて一定の振付を繰り返すなど、盆踊りと共通する要素もあります。

とは言え広場舞は第一に日常的なエクササイズであり、レクリエーションです。盆踊りのような霊性はありません。でも、この開催頻度はうらやましい。これは、たまたまの習慣の違いで、日本でこうあってもおかしくないはず。頻度はこれくらいで、しかし霊性を伴う盆踊りがあれば……。つまり、両者の良い所取り。それが実現できればこの私的な小規模盆踊りは、頃中での止むを得ない代替手段ではなく、そして本来の盆踊りとも共存する、もう一つの盆踊りになり得るのではないかと思います。